フルーツ王国福島で造られるクラフトビールって?
「毎週2種類のビールが新しく開栓します」
足立区北千住駅東口を出た旭町商店街にある、さかづきBrewing。最近都内にも増えてきた醸造所併設のタップルームに立つのは金山さん。大手ビールメーカー出身で、自らの夢を叶えるために2016年に独立を果たします。
大学卒業後、新卒入社で大手ビールメーカーへ
−ビール造りに関わるようになったのはいつ頃からなんですか。
大学で農学を研究してて、大学時代にビールと出会いました。新卒採用というところでビールメーカーへの入社を目指したのがそもそものスタートです。いわゆるビールのメーカーに入って、その会社では醸造をずっとやってきました。
結局、9年間そこの会社に勤めてましてそのメーカーでは醸造をずっと携わってたんですけれども、工場の現場から工程管理や品質管理、その後ラボに移動しまして、商品開発や技術開発を行なっていました。トータル9年間勤めたところで脱サラをしまして、今のお店を立ち上げました。
−どうして独立をされたのですか。
ちょうど30歳を超えるくらいで、自分の将来とか自分の生き方を考えた時に、定年まで会社に勤め上げてということが自分の中で想像できなかったんですね。
自分の思う価値観で生きていきたいと思った時に会社を辞めようと考えました。それで次に私に何があるのかと考えた時にビールだったんです。ビールならば好きでやってきたし、この先も続けていきたいって。
−前職と独立されてからでは違いを感じますか。
前職の商品開発部では好きにやらせてもらってました。ただ前提条件で大きく、広く、たくさん売ることが前置きで商品開発を行なっていました。アメリカに行ったり、イギリス行ったりしてマイクロブルワリーと知り合う中で、みんなに売れる必要はないんじゃないかなと感じることもありました。
ビールはもっと色んなスタイルがあってもいい。面白くて、楽しくて、自由なものなんじゃないかなってあって、日本はまだそこが弱いと思う部分はあります。
ビールはあくまで楽しい店づくりのための一つの要素
−「本日のビール」と黒板に書かれてらっしゃいますが、年間でどれくらいビールを仕込まれるんですか
月に8回仕込むうち、5回か6回は新しいレシピで作ってます。年間だと60回くらい新規のレシピですかね。
−独立されて4年間は同じサイクルですか。
1年目はバタバタでしたけど、今は結構新しいレシピをどんどん造ってという感じです。常に定番で残しているメニューは1種類だけです。それが風月ペールエールです
。このビールはオールラウンダーというか、本当に気を張らずに、導入とか締めとか食中とかリラックスして安心して飲めるものです。ほか固定の1種類は古巣のビールですね。
季節によりますが、その時に飲めるのがだいたい6−9種類くらいですね。週に2種類、新しく仕込んだビールが開栓するんです。
−とても早いですね。
小さい醸造場だからなせる業だと思います。季節感やそのときどきの素材を大事に、バラエティを楽しんでいただくことを目指しています。
−どのようなコンセプトでビールを造っているんですか。
根本、ビールは主役ではないと思ってるんです。結局、そこで過ごす人がどう楽しんでもらえるかっていうことだと思ってます。うちで造るクラフトビールを話題に取り上げられることが多いですけど、自分がやりたかったことは店づくりでして、ビールは店づくりのための一つの要素という気持ちです。
−みんな美味しく楽しく飲めればいいというイメージであっていますか。
楽しいの要素として、例えば季節によって素材が変わるとか、いつまでもおしゃべりしながら飲めるのも価値だし、純粋に食べ物として美味しいということかなとも思います。人によっていろんなタイプがいらっしゃると思いますね。
−そうなんですね、お客さんに飲み方のアドバイスはされるんですか。
はい、するようにしています。でも今はそこが課題ですね。お客さんが増えてしまったのに対して、スタッフの教育が追いついていないのでそれが課題ですね。
−ビールだけでなく、お料理にも本日のラインナップとありますね。
料理はすごく大事だと思っていて、キーワードとしては季節感とか一手間とかですね。とはいえ一方でカジュアル感とかあまり高くなりすぎてもデイリーユースにはできないんでちょっと親しみが感じられるものを考えています。
−なるほど、料理に使われる食材はどのように選ぶのですか。
魚と野菜関係は特にこだわっていますね。野菜は農家から直で取り寄せて、魚もそんな感じで新鮮なものを仕入れています。そこにはとても自信がありますね。
それで今だと、桜海老とフェーヴのアヒージョですかね。フェーヴというのはフランスのそら豆のことなんですけど、それをオイルでアヒージョにするんです。それはこの時期毎年やっていますね。
セゾンスタイルとかだと、スッキリしてるしドリンカブルであって、スパイスの感じもあるしスパイスの感じが、桜海老の魚介臭さをリフレッシュにしてくれます。セゾンが小麦なのでパンと優しく合いますし、アヒージョ自体の風味を受け止めてくれる感じですね。
セッションIPAとかだと、IPAだとアルコールが6%とかで重いので、あえてセッションにして軽めにリフレッシング効果もありつつ、ホップの香りが合いまるかなと思います。アヒージョがオイルなのでビールがドリンカブルなことは大事なことだと思います。この料理はこの2つのスタイルが合うと思いますね。
風月ペールエール(イングリッシュスタイル・ペールエール)
パンやビスケットのような香りを持つ麦芽を使ったオーソドックスなスタイル。イギリス原産のノーブルなホップがほのかに香りバランスが良く飲みやすい。
ティータイム(フルーツエール)
シナモンと焼きりんごを加えて、アップルパイの風味をビールで再現したオリジナルスタイル。
いぶき(ベルジャンスタイル・トリペル)
バナナのようなフルーティーな香りとすっきりとした飲み口が特徴。アルコール高めで華やかな香りがあり、とても口当たりの良い飲み口。
さかづきBrewingの今後とは
−どんな方にお店に来て欲しいですか。
一番はもっとビールは面白いんだっていうことを伝えたいという想いがあります。あとは飲食の楽しさとか、癒しとか求めている人に対して飲んでもらいたいなと思っています。理想なのはファミリーもカップルもご高齢の方もみんな来ていただきたいです。
あと、マーケティング的にはターゲット絞らないといけないと言われるけど、普遍的な価値を提供すればみんな来てくれると思っています。美味しいご飯と美味しいビールを飲めればいいという方に来て欲しいです!ペアリングも提案します。
−今後作りたいビールの構想はありますか
1つはラガーを造りたい。スーパードライじゃないけど、麦の味を純粋に楽しめるピルスナーを作りたい。今はうちの設備だと作れないのでいずれですね。もう1つはワイルドなビールを造りたいです。天然酵母とか野生酵母とか。あれをいつかはやりたいです。相当勉強と経験が必要だと思いますが挑戦したいです。
Director’s Voice
さかづきBrewingに取材をして特に感じたのは、圧倒的なアットホーム感や親しみやすさでした。オーナーの金山さん、提供されるお酒、お料理に魅力が溢れご近隣の方が金山さんに合いに行きたくなる。そんなお店なのではないでしょうか。
Junki Tada
さかづきBrewingについて
店舗名 | さかづきBrewing |
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住所 | 〒120-0026 東京都足立区千住旭町11−10 |
TEL | 03-5284-9432 |
営業時間 | 16時~22時30分(水曜日~金曜日) 13時~22時30分(土曜日) 13時~21時30分(日曜日) 定休日(月曜日・火曜日) |
※本記事内に表記されるビールとは、酒税法上発泡酒に分類されるものを含みます。
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