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「一宮で失われてしまった地ビールを復活させたい..!」
愛知県一宮市にブルワリーを構える”一宮ブルワリー”。こちらでは日本のクラフトビールブームの先駆けとも言われる、「第1次地ビールブーム」からビールの醸造を行ってきたベテランの醸造家山田さんがヘッドブルワーを勤め、一宮のビール好きから長年愛されている地ビールを醸造されています。しかし、一宮での地ビール造りはこれまで平坦な道のりでは無く、14年前には一時、地ビールが失われてしまいます。今回はそんな一宮で造られる地ビールを復活させた、一宮ブルワリー ヘッドブルワーの山田さんに地ビール復活までの道のりをお伺いしてきました。
第1次地ビールブーム時代の到来。山田さんが醸造家になったきっかけとは。
−山田さんがビールの醸造家となったきっかけを教えてください。
山田さん
若い時は東京で働いていたのですが、1997年、当時私が26歳の時に東京から一宮に帰ってきました。一宮で就職先を探しているときに、職業安定所から紹介された会社で地ビール事業を立ち上げる動きがあり、醸造のための従業員を募集していたのです。当時は第1次地ビールブームと言われるような時代で、酒税法が改正されたタイミングということもあり、多くの企業で多角経営が流行していました。大手企業などで新事業として地ビール事業の設立が増えていたのです。
私の中で特に「ビールを造りたい」という強い意思があったわけではないのですが、たまたま就職先が地ビールを造っていた流れで醸造家になりました。そのブルワリーは現在無くなってしまっているのですが、尾張ブルワリーというブルワリーで9年間醸造を行っていました。
−醸造家としてのスタートは尾張ブルワリーというところが起源だったのですね。そこから一宮ブルワリーの醸造家になったのはどのような経緯があったのですが。
山田さん
尾張ブルワリー自体は、大手繊維会社の「三星毛糸」の子会社「三星ケミカル」の1ディビジョンでした。ある年の経営方針でブルワリー事業からの撤退が決まり、そのタイミングで私も会社を退職しました。その後食品関係などビールの勉強になる会社に勤め、現在ではプラスチック加工会社に勤めながら醸造家を続けています。
一宮ブルワリーの設立は2010年になりますが、尾張ブルワリーが無くなってから一宮ブルワリーができるまでの4〜5年間は醸造家としての仕事をしていませんでした。
一宮ブルワリーの代表の星野と何度かビール造りについて話をする機会がありそんな時に、発泡酒の免許が誕生し、少量でのビール(発泡酒)製造が出来る様になりました。
その後二人で富山の大谷ブラッセリーへ見学に行き、これなら4坪に凝縮してやれる、品質も求められるということで醸造家として復帰することを決め、2010年に「一宮ブルワリー」を立ち上げることになりました。ただし当時はこうしたマイクロブルワリーは凄く少なく、設備面でも法制面でも苦労しました。
一宮ブルワリーが成長し続ける秘訣。
−山田さんが一宮ブルワリーで造られるビールにこだわっているポイントはありますか。
山田さん
こだわりといいますか、現在、第2次地ビール(クラフトビール)ブームと言われていますが、第2次地ビールブームで新たにブルワリーを立ち上げられた方たちの造るビールからも刺激を受けてビールを造っています。
第2次地ビールブームでブルワリー事業に新規参入している方たちは、第1次地ビールブームの時と少し変わっていて自分の意思で「ブルワリーになりたい」と挑戦される方が多いように感じます。醸造設備も自分たちでつくっていて、熱心に勉強し科学的なアプローチを取り入れたビール造りに励まれる方が多いように見受けられます。私のところにも「ビール造りを見学させて欲しい」と言ってくれる方たちが来てくれて、私の方も見学に来られる方たちの考えも参考にしながらビールを造っていますね。
例えば一時期から、ビールの中で「IPAブーム」というのが起きました。ビールの造り手側が味の強くて香りが強いIPAに固執して、「飲み手が本当に飲みやすいものを造れていないのではないか」と思うことがあったのです。一方で最近はセッションIPAなど、「飲み手が飲みやすいように」考えて造られているバランスが良いIPAが増えています。私もアメリカンホップの柑橘系の香りがする、ライトなビールを試しに造ってみようかなと思っているところです。
私自身、ビール業界では造り手として経験が長い方なので、最初は新規参入してきた新たな醸造家の意見を話半分で聞いていました。しかしその方達が勉強している内容は科学的で、教科書では学べないようなことだったので改めて新しいことを学ばなければいけないと思いました。
−これまでの経験に囚われず、新たなビールを生み出されているのですね。それでは山田さん一押しのビールを教えてください。
山田さん
『コーヒースタウト』と『スパイシーヴァイツェン』が一押しです。ただ、現在も模索している最中ということにさせてください。
コーヒースタウトからお話しすると、見た目は黒いビールでアルコールが6%あります。飲みごたえがあって、飲んだ後にズッシリと感じるようなビールです。私自身『ギネス』というイギリスのビールが好きで、ギネスも参考に造りました。ギネスの特徴である、濃厚なブランデーというかレーズンのような香りが好きで、副原料として大麦を使っています。現在もレシピに関しては試行錯誤をしていて、酵母を変えて造っているのでさらに良くなればと思いますね。
山田さん
スパイシーヴァイツェンは小麦麦芽と大麦麦芽を約50%ずつ使用しています。小麦麦芽が甘さやフルーティさを引き出しつつ、ナツメグやコリアンダー、オレンジピールが味を引き締めてくれています。ヴァイツェンというスタイルのビールはもともと野生の酵母を使っているビールで、一般的にはベーコンのような香りがするビールです。このスパイシーヴァイツェンに関しては、ベーコン臭を抑えることができました。
山田さん
先ほど「現在も模索中」とお伝えした理由は、実は昨年醸造設備の切り替えが行われて、前の設備で造っていたビールを造るために、若干レシピの調整が必要だったりまだ改良中であると思っているためです。
一昨年までは加工した100リットルの寸胴鍋でビールを造っていたのですが昨年の4月頃、醸造所のリノベーションが行われて鍋での醸造からタンクでの醸造に変わりました。タンクに変わったことで造ることが可能なビールの幅が広がった反面、温度管理が難しく、以前鍋で造っていたときのようなビールの味わいを出すのに、現在も模索している段階なのです。一宮ブルワリーで造られたビールを長年飲んでいただいているお客さんの意見を聞きながら改良しています。
地ビールにはフランスパンがオススメ!
−一宮ブルワリーで造られるビールと食事の合わせ方のコツはありますか。
山田さん
フランスパンがオススメです。一般的には日本人にとってピルスナーがビールのスタイルとして代表的なものだと思います。ピルスナーは香りが穏やかで苦味が弱く非常に飲みやすいビールです。だからこそご飯と一緒に飲むことができます。一方でピルスナー以外のビールに関しては、ご飯と合わせるよりは、食べ応えがしっかりしているけど淡白な味わいのフランスパンなどが良いと思います。
−最後にメッセージをお願いします。
山田さん
一宮ブルワリーはビール醸造設備の切り替えでビール自体が成長している時期になりますので、成長を見守ってくれる方にぜひ飲んでもらいたいなと思います。
私がビールを造るときの考えの根底には、サッポロビールで醸造を教わった経験や第1次地ビールブームのときのことなど、古き良きを大切にしつつも、新たな考えも取り入れていきたい思いがございます。様々な面で良いところを引き継いで、お客さんが納得できるビール造りに挑戦していきたいと思っていますので、これからもよろしくお願いいたします。
Director’s Voice
一宮ブルワリーで造られるビールはcom-cafe三八屋というブルワリーに併設された飲食店で飲むことが可能です。取材を行った4月現在はテイクアウトを含めお店を完全休業にしているそうですが、今後はペットボトルでのビールの販売を開始予定とのことです。「com-cafe三八屋は街のコミュニティスポットである」と考えられており、新型コロナウイルスの早期終息のため、現在は新型コロナ終息後に合わせた準備をされていると伺いしました。一宮ブルワリーのビールを飲める日が来ることが待ち遠しいですね。再オープンされる日の情報は随時公式サイトで発信される予定のようなので後述のページでもご確認ください。
Junki Tada
一宮ブルワリーについて
ブルワリー名 | 一宮ブルワリー |
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住所 | 〒491-0859 愛知県一宮市本町4丁目1番9号 |
一宮ブルワリーのビールが飲めるお店 | com-cafe三八屋(一宮ブルワリー併設) |
営業時間 | 12:00~23:00(日曜・月曜定休日) |
TEL | 0586-27-4838 |
公式サイト | http://www.38ya.org/ |
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