「ビールとともに、激辛しゅうまいが最高です」
「ビールの多様性と豊かさをもう一度取り戻す」
みなさんは「ビール」という単語を目にしたとき、何を思い浮かべますでしょうか。きっと多くの人のそれは、ワインや日本酒に比べると均質的で「黄色くて苦いもの。」なのではないでしょうか。今回お話をお伺いした”Far Yeast Brewing”では「ビールの多様性と豊かさをもう一度取り戻す」というコンセプトを掲げ、ビールの多様性を広げる取り組みをされていらっしゃいます。日本では珍しいバレルエイジングを施したビールなど、ビール醸造におけるこだわりを社長の山田さんにお聞きしてきました。
ビールの多様性をヨーロッパで感じ、ブルワリーへ。
−まずはブルワリー事業を起こそうと思ったきっかけを教えてください。
山田さん
元々はIT企業に勤めておりビールとは関係のない仕事をしておりました。15年ほど前に3年間ほどヨーロッパの方に住む機会がありまして、その時にヨーロッパの伝統的なマイクロブルワリーが造っている様々なスタイルのビールに触れました。
当時もともと思っていたビールの概念がビールとは工業製品であるという理解だったのですが、思っていたよりももっと多様で文化のある飲み物だということを知り、自分でも造ってみたいと思ったのがきっかけです。
その後日本に戻ってきて、当時アメリカでムーブメントを起こしていたクラフトビールを6年程自分で勉強して、2011年9月に会社を設立致しました。
−ビール自体はヨーロッパに渡る前から好きだったのですか。
山田さん
はい。大手ビールメーカーが造る、一般的なラガー系のビールはずっと飲んでおりました。特定のビールの銘柄が好きということは無いのですが、マイクロブルワリーが造るビールは多様性が魅力的なので、様々なスタイルのビールを飲んで、探究していく楽しみがありました。
ベルジャンスタイルをベースにバレルエイジングも取り入れたビール造り。
−現在造っているビールのコンセプトはどのようなものですか。
山田さん
山梨県とベルギーの2箇所で醸造しており、山梨県では『Far Yeast 東京』シリーズ、ベルギーでは『馨和 KAGUA』というシリーズのビールを造っております。共通している特徴は、『ベルジャンスタイル』をベースにして造っているということです。ベルジャンスタイルといっても様々なアプローチがございますし、アレンジもできますので瓶内発酵や容器内発酵を行い、香りが華やかなビールを造っています。
−Far Yeast 東京シリーズの醸造の地を、山梨県小菅村に選んだ理由はございますか。
山田さん
山梨県小菅村は自然豊かで水が豊富に利用できる恵まれた場所で、ビール造りには最適な場所だと思っております。小菅村にはご縁がありこの醸造所をつくることができました。
−Far Yeast 東京、馨和 KAGUA それぞれのビールの特徴を教えてください。
山田さん
Far Yeast 東京の定番ビールに関しては、クラフトビールの初心者の方でも気軽に手を取ってもらえるビールということをイメージして造っており、スタイルとしては『セゾン』、『ゴールデンエール』、『IPA』の3つのスタイルで展開しております。いずれのビールもホップの香りが華やかにきいて、ドリンカビリティで、暑い日にごくごく飲んでもらえるようなビールになっております。
山田さん
定番ビール以外にもその時々によって限定品のビールを造っております。なかでも『Off Trail(ヨミ:オフトレイル)』という微生物を生かしたビールはシリーズ化して毎月のようにリリースしています。野生酵母や木樽内での*バレルエイジングの手法により様々なスタイルにチャレンジしています。
*バレルエイジングとは、木樽で熟成することを意味し、 ビールをワイン樽やウイスキー樽の中で熟成するビール醸 造の手法。日本では木樽の入手が難しくまだ一般的なビールでは無い。熟成年数や木樽によってビールの香りや味わいを変化させることができる。単純にビールに樽香をつける目的でやる場合もあるが、Far Yeast Brewingの場合は木樽の中で微生物の発酵を促し複雑なフレーバーを得ることも狙ってる。
弊社で扱っている野生酵母はブレタノマイセス系の製品酵母を使っていたり、フルーツの皮についている酵母を利用したりしています。常に面白くて美味しいビールを追求し て日々造っております。
山田さん
馨和 KAGUA は食事と一緒に楽しんでもらえるように、ハイエンドな和の食卓にフォーカスしたビールになっております。香り付けに山椒と柚子を使用して、和食に寄り添えるよう工夫して造っております。ボディーが非常に強いビールになっておりますので、ワイングラスでじっくり飲んでもらえるようなスタイルのビールになっております。
−山田さんオススメの商品を教えてください
山田さん
先ほど少しお話しした、Far Yeast 東京シリーズの定番である『Far Yeast TOKYO WHITE』、『Far Yeast TOKYO BLONDE』、『Far Yeast TOKYO IPA』を新しく缶ビールで発売しまして、こちらがオススメです。
Far Yeast TOKYO WHITE は、やや白濁した非常に淡いゴールドが色をしており、爽やかなホップの香りとフルーティーなエステル香がバランスをとっております。ホップの苦味は少なく、心地良い酸味を感じるほどドライな味わいのビールになっております。
山田さん
Far Yeast TOKYO BLONDE は、見た目は黄金色で、ホップの香りとほのかなエステル香があり、フルーティなホップフレーバーがもたらす華やかさと苦味が程よくバランスのとれたビールになっております。
山田さん
Far Yeast TOKYO IPA に関しては、見た目は銅色をしています。ホップ、モルト、エステル香をバランスよく感じることができ、柑橘系のホップの香りと苦味、ほのかな焙煎モルトのフレーバーなビールになっております。
山田さんが提唱するビールの飲み方とは。
−ビールに合わせた食事のオススメはございますか。
山田さん
前提として、ビールは食事と合わせる幅が広いと考えております。食事と合わせるに当たって様々なアプローチの仕方があるので、一概にこのビールにはこの食事が正しいということはないと思っておりますが少し紹介いたします。
例えば、ビールと食事を同じ向きで合わせるのであれば、柑橘系のホップの香りのするビールには、柑橘を使用したドレッシングがかかった料理の相性が良いと思います。一方で、リセットするアプローチの仕方であれば、脂っこい肉料理にはさっぱりとしたビールを合わせると相性が良いです。
また、個性が強くボディーも重いビールと、味のクセが強い食事を合わせると意外性があって、面白いアプローチの仕方もございます。
−昨今のクラフトビールブームの中、まだクラフトビールを知らない方も多いとは思いますが、今後造っていきたいビールはございますか。
山田さん
バレルエイジングを中心とするビールを造っていきたいと思っております。世界のブルワリーではブルワリーごとに個性的なビールを造っておりますが、どうしてもモルトとホップの組み合わせだけではオリジナリティーのあるビールを造るのが難しく感じます。
ブルワリーとして「クオリティーの高いビールを造っていく」ということは日々努力しておりますが、弊社のオリジナリティーを出していくため、今後取り組んで行きたいと思っていますね。
Director’s Voice
今回は Far Yeast Brewing で造られているクラフトビールについてお話をお伺いしました。取材中印象に残ったのは「オリジナリティーのあるビール造り。」筆者は Far Yeast Brewing のビールを何度か飲んだことがありますが、確かに Far Yeast Brewing は熟成によって酸味が感じられるビールがあったりと、日本の大手ビールメーカーには無い特有の個性を感じることができます。そんな Far Yeast Brewing では新たな事業として、この度クラフトジンブランド『KAGUA Gin』を立ち上げました。次回はクラフトジンについてのインタビューとなります。次回もぜひお楽しみに。
Junki Tada
Far Yeast Brewingについて
会社名 | Far Yeast Brewing株式会社 |
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住所 | 〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-6-8 5階 |
醸造所 | 〒409-0211 山梨県北都留郡小菅村4341-1 |
公式Webサイト | http://faryeast.com/ |
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