【連載シリーズ】ビールを美味しく飲むためにビールのことをもっと知ろう!−第1話、ビールってどんな液体?
二日酔いで胸やけが止まらないときの対処法
今回の登場人物
有希野ユキ 薬剤師ライター。旅行業を営む夫と息子の3人暮らし。現在はモロッコ在住でオンライン対応の薬剤師として働く。
二日酔いで最も苦しい症状の一つが、胸やけでしょう。経験したことのある人なら、二度と味わいたくないと思うはず。この記事では二日酔いで胸やけが起きてしまったときの原因と対処法についてご紹介します。
二日酔いで胸やけする原因
飲み過ぎた翌朝、何となくみぞおちから喉までのあたりが気持ち悪い。
そんなとき、多くの方がその不快な症状を「胸やけがする」と表現することでしょう。身近な「胸やけ」と言う言葉ですが、具体的にどんな症状なのか、うまく説明できる人は少ないかもしれません。
一般的に胸やけとは、みぞおちから喉にかけてジリジリ焼けるような痛みや違和感のこと。とはいえ、中には胃もたれや胃のムカつきを胸やけと表現する人もおり、一言で胸やけと言ってもその症状は多岐にわたっています。
二日酔いによる胸やけの原因は、言うまでもなくアルコール。アルコールによって生じた過剰な胃酸が、胃や食道の粘膜を傷つけることが原因です。
ここでは、アルコールがなぜ胸やけを引き起こすのか、そのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。
胃の炎症
まず1つ目の原因は、アルコールによって起きる胃の炎症。アルコールは胃酸の分泌を促すとともに胃の粘膜を直接攻撃し、胃酸と胃粘液のバランスも崩します。
胃粘液は、胃酸から胃を守る働きをしている防御システム。これが剥がれると、胃が直接胃酸に晒され、粘膜障害が起こります。その結果胃の炎症が起こり、胸やけの症状に引き起こすのです。
胃酸の逆流
二日酔いの胸やけになる2つ目の原因は胃酸の逆流です。胃酸の逆流が起きる主な理由は、アルコールが胃の噴門部と呼ばれる場所を緩めてしまうから。
普段は細く締まっている胃の噴門部。胃と食道の間にあり、胃酸の逆流を抑える働きをしています。しかしここへアルコールが入ってくると、この噴門部の筋肉がアルコールの働きによって緩みます。すると胃酸が食道まで逆流してしまい、食道の粘膜が傷つけてしまうのです。
この結果、起きるのが逆流性食道炎。胸やけは、逆流性食道炎の典型的な症状です。
近年、食生活の欧米化やピロリ菌の除菌が進んだことなどを背景に、胃酸の分泌が多い人が増え、逆流性食道炎による胸やけに悩む人も増えています。
二日酔いのときにげっぷが出ると楽になる?
二日酔いで辛いとき、げっぷが出ることで楽になることはないでしょうか。
げっぷによって苦しさから解放される一瞬は、二日酔いになったときの唯一の救いとも言えるかもしれません。きっと実際に経験している人も多いことでしょう。
げっぷとは?
そもそも、げっぷとは何でしょうか。
げっぷとは、食事や会話などで無意識に飲み込んだ空気が、胃や食道から逆流する現象のこと。げっぷという響きから俗語のように思われるかもしれませんが、医療関係者でも一般的によく使う言葉です。ちなみに正式な医療用語では、噯気(あいき)やおくびと言います。
げっぷはアルコールだけが原因ではありません。会話をしながら食事をするだけでも起こりますし、早食いなどのちょっとした習慣でさえ、げっぷにつながります。
げっぷの背景には病的なものが隠れていることもありますが、一時的に出るげっぷは生理現象のように自然なもの。特に心配する必要はありません。
げっぷで二日酔いが楽になる理由
では、げっぷで二日酔いが楽になるのはなぜでしょうか。
それは胃の中にたまっていた空気が外に出ることで、張っていた胃が月賦で一時的に緩んで胃の圧迫感が軽減されるから。箱の中にある大きな風船が少し緩んで、風船による圧でパンパンだった箱が元の形に戻るのと同じです。
ポイントは、楽になるのは一時的であるという点。げっぷは二日酔いを治してくれるものではなく、胸やけの原因の一つである胃の圧迫感を一時的に和らげているだけなのです。
二日酔いになるとげっぷが出やすい
楽になるからげっぷをどんどん出してしまいたい、と思う方もいるかもしれません。しかし二日酔いのときのげっぷは、普段より出やすいもの。わざわざ出そうと思わなくても、勝手に出てしまうことも多いのです。
二日酔いのときにげっぷが出やすい原因としてまず考えられるのは、アルコールによって胃の噴門部が緩んでいるため。ほんの少しの刺激で空気が逆流しやすくなっているのです。
さらにお酒の場では会話も弾むことが多く、自然と飲み込む空気が増えていることも少なくありません。
ビールに含まれる炭酸も、げっぷの原因になります。ビール好きの方は自覚がある方も多いことでしょう。
げっぷの臭いは酒臭い
げっぷの出やすい条件が揃っている二日酔いのシチュエーション。しかし頻繁に出るとなると、げっぷの臭いが気になる方も少なくないでしょう。
前述のとおり、げっぷは胃の中の空気そのもの。アルコールをたくさん飲んだ後の二日酔いでは、お酒の臭いのするげっぷが出てしまうのは避けられません。
そもそもですが、げっぷで二日酔いが楽になるとは言っても、それは一時的なもの。根本的な解決方法ではありません。アルコールの臭いで周りを不快にさせてしまう可能性もあります。
一人でこっそりげっぷをする分には問題ありませんが、胸やけの解消方法としては別の方法を行うことをおすすめします。
二日酔いの胸やけを解消する方法
最後に、二日酔いの胸やけ解消に効果が期待できる方法を3つご紹介します。
水を飲む
まず1つ目の胸焼け対策は水を飲むこと。二日酔いのとき、胃酸は過剰に分泌されています。水を飲むことで胃酸を中和し、胸やけ症状を和らげます。
また、水をしっかり飲むとアルコールの分解が進み、体の外へより早く排出されるようになります。脱水状態は胸やけ以外の二日酔い症状にも影響するので、積極的に水分を摂るようにしましょう。
胃薬を飲む
胃薬を飲むのも胸やけ対策に良い方法です。
出過ぎた胃酸を抑える薬や荒れた胃の粘膜を治す薬は、ドラッグストアで手に入ります。胸やけがひどいものの、睡眠や水分摂取に問題がない場合は、ご自身で胃薬を飲んで様子を見ましょう。
胸やけだけではなく吐き気や嘔吐など、胃の症状がひどくて症状の改善が見られない場合は、病院への受診をおすすめします。
二日酔いの胸やけに良い食べ物を摂る
胸やけの解消を助けてくれる食べ物としては果物類が挙げられます。
理由は果物に含まれる果糖やビタミン類が、アルコールの代謝や分解を助けてくれるから。デザートとして食べるのはもちろん、オレンジジュースなどの飲み物で摂るのもおすすめです。
果物の中でも特におすすめなのは、柿。「柿が赤くなれば医者は青くなる」とことわざにもあるように、柿は栄養価の高い果物としてよく知られています。
二日酔いの胸やけを和らげる働きについても、例外ではありません。二日酔いを助けてくれるのは、柿に含まれるタンニンという成分。胃の粘膜を修復する作用のほか、アルコールの吸収や分解を促す作用が知られています。
一方、胸やけ対策の飲み物は緑茶が良いでしょう。なぜなら、緑茶も柿と同様にタンニンを含むからです。さらに緑茶に含まれるカフェインは、頭痛やだるさを和らげる作用もあります。
まとめ
つらい胸やけ症状。放っておくと、逆流性食道炎などによる慢性的な胸やけに悩むことになる可能性もあります。
何より大切なのは、胸やけになるほどのお酒を飲まないこと。量を上手にコントロールして、お酒を楽しむようにしましょう。
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