都会の真ん中にある都市型ワイナリー!?
「スタイルにこだわらず、自分たちが自信をもって美味しいといえるビールを造っていきたいです」
良質な温泉とパウダースノーで有名な長野県野沢温泉村にある”AJB-アングロジャパニーズブルーイング”。荘厳な大自然と村の人々の暖かさに惚れ込みこの地を選び、仲の良い夫婦が営んでいるブルワリーです。「自分の納得するようなビールを造りたい」という想いのもと2014年に開業されました。
ビール造りにおいて一切妥協せず、スタイルにこだわらない、挑戦的なビールを続けることに情熱を注いでいらっしゃいます。今回はそんな”アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング”の誕生秘話やこだわりのビール造りについてなど、奥様の絵美子さんにお話をお聞きしました。
今回の登場人物
BANSHAKU編集部多田(以下、BANSHAKU多田)
好きなお酒はビール(セゾンスタイル)。ビアテイスターの資格を持っている。最近、自宅居酒屋化計画を実行中。詳細は謎に包まれている。
アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング 絵美子さん
美しい四季を感じる大自然、野沢温泉でクラフトビールの醸造をして6年。好きなスタイルはサワービールとバレルエイジド。やんちゃな2ボーイズの母。
”アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング”の誕生秘話
本日はよろしくお願いいたします!まずは会社を立ち上げられた経緯を教えてください。
弊社は長野県の野沢温泉村にあり、私と夫のトムの2人で始めたブルワリーになります。野沢温泉は日本でも有数のパウダースノーが楽しめるところで、冬になると多くのスキーヤーやスノーボーダーがこの町に押し寄せます。夫のトムもヨーロッパ各国のスキー場を訪れるほどスノーボードが好きで、2010年の1月にはじめて野沢温泉を訪れました。
そこから年に数回、スノーボード旅行で野沢温泉を訪れるほどここが好きになり、2012年3月に2人で移り住んできたのです。最初はブルワリーを始めるためではなく、「田舎暮らしでスローライフを送りたい」という想いで移住先として移り住んできました。
最初はビール造りではなく新しい移住先として移り住んだのですね。その後のお話もお伺いしたいです。
私たちは以前から食に興味があり、移住してきた1年目は海外から日本にシェフを招待して、日本各地の選りすぐりの食材やお酒でペアリングを楽しむ”里武士”というイベントを開催していました。
ちなみに”里武士”の名前の由来は夫のトム・リブシーからつけています。そのときに日本のクラフトビールも提供していたのですが、2012年ごろの日本のクラフトビールは素晴らしいものがある一方で、何か物足りなさを感じる面も感じていました。
トムはイギリスのダービーシャー州出身でして、そこではどんな小さな町にもローカルのビールを楽しめるパブが点在しており、ビールを飲むことは水を飲むことと同じくらい日々の生活に根付いております。以前からトムはイギリスのビール醸造所で働いていた経験もあり「日本で満足がいくビールを自分たちで造ればいい」と考えて、2014年1月に”アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング”を開業しました。
ビール造りにおけるコンセプトとは
お二人の行動力は素晴らしいですね。イギリスと日本では気候や風土、ビールを楽しむ文化が違うと思いますが、苦労されたことはございましたか。
イギリスでは日本と違い常温でビールを楽しむのが主流なので、オープン当初からハンドポンプを導入してイギリス本場で飲まれているようなイングリッシュビターを提供しています。
もちろんオープン当初、泡がないビールは地元の方にとって初めての出会いであり、驚かれていましたがハンドポンプのビールを求めて「またあのビールが飲みたい」と言ってくれる方が多く、実は大変だと思ったことは今までありませんでした。
私たちのビール造りのコンセプトは「スタイルにこだわらず、自分たちが自信をもって美味しいといえるビールを造っていきたい」と思い、日々の醸造に取り組んでいます。
ヘッドブルワーであるトムは昔から芸術家として活動してきているのでオリジナルティー溢れるものや、独創的な発想をビールに造り替える才能があります。そういったビールを弊社の一番の特徴として、常にドリンカビリティを考え、一杯、またもう一杯と飲み続けたいと思うビールを造っています。これからも挑戦的なビールを造ることに情熱を注いでいきたいと思っております。
トムさんは芸術家をされているのですね。驚きです。挑戦的なビールとありましたが、どのようなビールですか。
オープン当初から木樽を使った”バレルエイジ”への強い情熱をもっており、日本初そして唯一5000Lのフーダー(Foeder)を2基所有しております。これらのタンクで長期熟成させたビールをブレンドするタンクも導入いたしました。私たちは日本のブルワリーでは数少ない、3年熟成したランビックをブレンドしたビールなども造っております。
また”キングコングニードロップ”というビールも造っており、こちらは昨年の”IBC(インターナショナルビアカップ)”で金賞およびカテゴリー最優秀賞を受賞しているバーボン樽熟成のインペリアルスタウトです。今年初めの”ジャパンブルワーズカップ”でも1位を受賞しました。濃厚でクリーミー、バーボンの豊潤な香りと味わいとカカオのような苦味と甘さなどがさまざまな形で口の中に合わさるインペリアルスタウトです。毎年一回だけリリースしており、今年のビンテージもあと少しで瓶詰めに入ります。
ビール造りにおいて一切妥協せず、スタイルにこだわらない、挑戦的なビールだと自信を持っておりますね。サワービールや熟成ビールなど、型にこだわらず自分たちのスタイルを貫き、様々なスタイルのビールにチャレンジしていきたいです。
フレッシュなホップを感じるIPAが人気
日本だとバレルエイジは珍しいですね。醸造が難しいイメージがあります。お客さんからはどのようなビールが人気ですか。
世界中で大人気のIPAに始まり、先ほどのようなバレルエイジドのビールやフルーツを使ったサワービールなど様々なビールが人気があります。
特にIPAに関しては、弊社の最大の特徴としてホップを惜しみなく大量に使用しており、ホップの香りとフレッシュさや苦味そしてホップのジューシーさを楽しめる味わいになっています。
ホップのフレッシュさを大切にしているので、ビールが出来てからすぐに瓶詰めや樽詰めをしていますが、IPAが好きな方にはぜひビールが完成してからすぐ飲んでいただき、フレッシュなホップを感じてもらいたいですね。
絵美子さんが教えてくれたおすすめフードペアリング
とても贅沢なIPAになっているのですね。ビールにおすすめのフードペアリングはございますか。
IPAだとパンチの効いた料理にも負けないのでスパイスを効かせた料理をおすすめしております。弊社のレストランで提供している”牛ハツのビーフジャーキー”との相性は抜群ですよ。
また、サワー系のビールは、豚肉や魚介類のお料理との相性が良く、一番びっくりしたのが白身魚の酢漬けでした。白身魚のさっぱり感と酢漬けの甘味が相まって口の中がすっきりして相性がよかったです。
どんなビールにも合う料理やどんな料理にも合うビールを弊社のラインナップから選んで、お客さんにペアリングを推奨しております。今後はお寿司や蕎麦のような繊細なお料理にも合わせられるようなビールを造りたいと思っております。
Director’s Voice
取材中は絵美子さんの熱意がこもったお話しに、終始圧倒されてしまった多田でした。ここに書ききれなかった貴重なバレルエイジビールなど、ブルワリーとして茶天神グナビールは野沢温泉の地にて味わってみたいです。コロナ期間はオンラインショップでみなさまもビールを楽しめます。この機会に是非。
Junki Tada
アングロ・ジャパニーズ・ブルーイングについて
ブルワリー名 | アングロ・ジャパニーズ・ブルーイング |
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住所 | 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9347 |
TEL | 0269-67-0710 |
公式サイト | https://anglojapanesebeer.com/ |
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