「新潟県といったら胎内高原ビールだよね、と言っていただけるような新潟県の顔となるビールを造りたいです。」
「ビールが苦手という先入観を持たずに手にとってもらえると嬉しいです」
みなさんは『瓶内二次発酵』という言葉を知っているだろうか。クラフトビールを瓶に詰めてから発酵を促し熟成させることで、ビールの味わいに複雑さや奥行きを出す醸造手法だ。
国内でこの手法を取り入れているブルワリー(クラフトビールの醸造所)はまだ数えるほどである。今回は国内有数の瓶内二次発酵にも積極的に挑戦されている“奈良醸造“浪岡さんにお話を聞いていく。
今回の登場人物
BANSHAKU編集部戸川(以下、BANSHAKU戸川)
編集部随一の音楽通。趣味は音楽とお酒、AirPodsとは親友であり渋谷のタワレコに頻繁に出没する。
奈良醸造株式会社 代表取締役 兼 醸造責任者 浪岡さん
(以下、奈良醸造 浪岡さん)
趣味は読書と旅行。奈良生まれ、奈良育ち。好きなホップはMosaic。
奈良醸造誕生の経緯
まずは奈良醸造が誕生するまでの経緯を教えてください。
私の前職は奈良県庁で土木技師としてインフラ整備を通じて地域づくりの仕事をしていました。当時、奈良県では日本酒の酒蔵は多いのにビールを造るブルワリーは1カ所しかなく、関西の中でも京都や大阪に比べると少ないのでもっとあればいいのにと思っていました。
そんな矢先、周りの知人からも背中を押されて『誰もやらないのであれば自分でやるか』と決心したのです。それからは京都にある京都醸造さんで2年弱、醸造を学びました。奈良醸造でクラフトビールを醸造開始したのは2018年6月になります。
醸造は浪岡さんがされていらっしゃるのですか。
ビール造りのレシピは私が書いていますが、スタッフと協力して仕込みをしています。
どのようなスタイルのビールを造っていらっしゃるのですか。
スタイルには特に制限せず、これまで2年間で50種類を越えるビール造りをおこなってきました。
すべての商品にデザインを持たせたビール造り
奈良醸造さんの公式サイトでビール紹介ページを拝見したのですが、1つ1つのビールにイラストを載せていらっしゃいますね。これも浪岡さんがデザインされているのですか。
デザインはデザイナーさんにお願いしています。こちらからレシピ、ビール名などをお伝えし、デザイナーさん側でイメージを膨らませてデザインの提案をしていただいています。もともとお互いにお酒が好きということもあり、お互いに、「そう来るかー」と楽しみながら一つのものを作り上げている感覚です。
それぞれのビールをデザインしているのには理由があって、一般的にビールの写真といえばビールの液体がグラスに注いである状態ですが、写真だけを切り取ると何のビールなのかわからなくなることを懸念しました。ビールのコンセプトや特徴を視覚化させることができればと思って、デザインをつけることにしました。
確かに写真だけでも何のビールかわかりますね。これらのビールはどちらで飲むことができるのですか。
醸造所併設のタップルームやオンラインストア、全国の酒販店にもボトルビールを卸しています。現在、新型コロナウイルスの影響でタップルームでは持ち帰りのみのビール提供をしておりまして、クラウラー(缶詰め持ち帰り)で2種類とボトルビールで3種類の提供になります。オンラインショップでは2種類のボトルビールを販売していますよ。
浪岡さんおすすめクラフトビール
おすすめのビールはありますか。
それでは2つ紹介します。
まずは”INTEGRAL(インテグラル)”というビールです。こちらは10月1日から販売を開始しています。セゾンスタイルのビールを瓶内二次発酵しており、奈良醸造として初めての定番ビールになります。
セゾンはIPAと比べると造っているブルワリーがまだまだ少ないですが、セゾンが持つ酵母の醸し出す華やかな香りは食事にも合わせやすく、みなさんに受け入れられやすいのではないかと思います。瓶内二次発酵をさせることにより味わいが複雑になりますし、私個人的にも好きなスタイルですね。
もう1つのおすすめが”PHILHARMONY(フィルハーモニー)”というビールで、スタイルはベルジャンウィットです。特徴としては酵母由来の複雑な香りと小麦の柔らかさがあり、アルコール度数が4.5%なので大変飲みやすいです。
奈良県産の“大和橘“という日本固有種である柑橘果実を使用しています。大和橘は酸味や苦味が強くタネが多くて生食には向いておりません。そのため絶滅してしまう恐れもあったのですが、数年前から奈良の地元で大和橘を復活させる取り組みをされている方がいました。ビールであれば、大和橘の特徴を生かしたものができるのではないかと思い商品化させたのです。
また、奈良の日本酒の酒蔵である油長酒造さんでは、大和橘の果皮を使ってクラフトジンを造られています。私たちは果実を使うことで皮、実余すことなくお酒造りに活用できておりますね。
それぞれのビールと相性のいいフードペアリングはありますか。
まずINTEGRALはアルコール度数が高くドライな味わいなので、動物性の脂肪分があるような食事にも合います。チーズやビーフパテのようなこってりした料理とでも相性がよいです。
PHILHARMONYは爽やかに仕上がっているので、シーフードに合わせていただきたいです。セゾンスタイルが生まれた、ベルギー本国ではセゾンにムール貝の料理などを合わせています脂っこくない、あっさりした料理と合うと思いますよ。
最後にどのような方に奈良醸造さんのクラフトビールを飲んで欲しいですか。
『ビールは苦くてお腹一杯になってしまうもの』と、とっつきにくいイメージを持っている方に飲んでいただきたいです。私自身がクラフトビールと出会うことで自分でも飲めるビールがあることに気がつきました。その経験を奈良醸造のビールでしていただきたいと思っています。ビールが苦手という先入観を持たずに手にとってもらえると嬉しいですね。
Director’s Voice
瓶内二次発酵をさせたビール造りをされている国内のブルワリーは珍しい。トレンドであるIPAに捉われず、多様なビール造りに取り組まれるのは浪岡さんのこだわりを感じる。奈良醸造さんではIntegralの別バージョン、“Brett Version(ブレットバージョン)”も11月に販売を予定されておりこちらの販売も待ち遠しいところだ。今後もSNSやウェブサイトから最新情報をチェックしていきたい。
Junki Tada
奈良醸造について
住所 | 〒630-8452 奈良市北之庄西町1丁目8番地の14 |
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TEL | 0742-64-0108 |
公式サイト | https://narabrewing.com/ |
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