「ビール醸造は土づくりをコンセプトに、できるだけ自分の手で栽培した麦やホップを使ってビール造りを行っております」
「酒造りは神事であるという精神のもと酒造りを行っています」
創業元禄15年、当時武州三田村澤井の地に小澤酒造は誕生しました。東京奥多摩の自然をふんだんに利用した地酒として長年親しまれてきた澤乃井は、日本酒の老舗として現在も新しい商品の開発を行っています。本日は小澤酒造 吉崎さんに日本酒造りに込められた想いやこだわりを聞いてきました。
小澤酒造の酒蔵紹介
−まずは小澤酒造さんの概要紹介をお願いします。
はい。小澤酒造の創業は江戸時代中期である元禄15年、西暦でいうと1702年となりますので300年以上日本酒造りを行っている酒蔵です。
東京都には日本酒の酒蔵が9軒あるのですが、その中でも最も西にある酒蔵が小澤酒造です。お酒の銘柄は『澤乃井』と言いまして、この土地の地名に由来しています。創業した当時はこの辺りの土地を『武州三田村澤井』と言ったそうです。(現在は東京都青梅市沢井)非常に山深い場所から豊富な湧き水が出ていて、綺麗な沢が流れております。この土地の豊かな水を使ってお酒を造っていることから『澤乃井』と名付けられました。
また、小澤酒造のトレードマークはサワガニにちなんだ『カニ』のマークです。サワガニは水のきれいな清流に生息すると言われており、実際に酒蔵の近くでサワガニを見かけることがあります。酒造りを行う環境の状態がよく保たれている証として、サワガニをトレードマークにしています。
もともと日本人にとってお酒は、神様に献上するお供え物でした。お酒は神様と人間との中立ちとして、欠くことのできない役割を担います。ですので『酒造りは神事である』という精神のもと、毎朝、神棚に一礼してから仕事を始めております。
こちらの元禄蔵は創業当時からほとんど変わらず、現在もまだ現役で使われています。建物の中が涼しくなっていて、夏の暑い日でも室温が20℃前半くらいになります。この理由は建物が昔ながらの『土蔵造り』となっていて、厚い土壁で覆われていることと、屋根が二重構造になっているためです。外気温の影響を受けにくく、朝晩の温度差はほとんどありません。日本酒を造ることはもちろん、貯蔵することにも適しており現在は貯蔵蔵として使っています。
−貯蔵蔵の中には何があるのでしょうか。
出荷待ちの状態の日本酒を貯蔵しているタンクがございます。タンクには番号が書いてありまして、下に書いてある数字が容量をリットルで表した数字です。小さいタンクで100リットルから大きなタンクは何万リットルとなり、全部で200本程度のタンクがあります。
澤乃井の日本酒造りとは
−澤乃井はどのようにして造られているのでしょうか。
日本酒はお米で造るのですが、弊社の場合は玄米で仕入れて精米にしています。お米は日本酒作りに適した酒米を主に使用しています。代表的な品種で「山田錦」というものがあるのですが、酒米は食用米に比べ、粒が大きいことが特徴です。なぜ粒が大きいかというと、精米時にお米を深くまで削ることができるためです。また、成分としてはタンパク質が少なくて、デンプン量が多いという特徴もあります。
日本酒造りにおけるもう一つの大事な原料は水です。澤乃井では自然豊かな土地を活かし、江戸時代に掘られた横井戸から湧く水を仕込水として使用しています。外国の方が酒蔵見学に来られた時にお聞きしたのですが、この井戸の水の透明度がとても印象に残ったそうです。
この湧き水は鉄分やマンガンといった成分が少なく、有機物をほとんど含みません。鉄分は日本酒の色合いを損ねることに繋がります。酒造りに適した水が安定的に採れることが日本酒を造り続けてこられた一つの理由になりますね。
酒造りの作業工程は、いくつかあるのですが『精米』という工程をご紹介します。玄米の外側にはタンパク質や脂肪が多くありますので、その部分を削ることで、雑味を抑えたすっきりとした味わいにしていきます。一般的な日本酒では玄米の3割くらいを削りますが、4割削るものを吟醸酒、5割以上削るもの大吟醸と呼びます。
日本酒造りの作業工程は一般的に、精米・洗米・浸漬・蒸し・放冷・製麹・酒母造り・仕込み・上槽・濾過・火入れを経て製品化されます。
作業工程自体は一か月半ぐらいかかります。澤乃井の場合、毎年9月の新米が獲れる時期に酒造りをスタートし、10月の下旬頃にその年の新酒が出来上がります。翌年の4月くらいまで酒造りが続きます。
−澤乃井は珍しいお酒もあると聞いたのですがどのようなお酒なのでしょうか。
一般的なお酒は貯蔵タンクに貯蔵してから半年〜1年で出荷されますが、さらに長期貯蔵している熟成酒があります。小澤酒造では「蔵守」というブランドで熟成酒を販売しています。日本酒にとって良い環境条件に置くことでお酒を熟成することができます。
熟成をすることで、まずお酒の色が琥珀色(読み:こはくいろ)に変化していきます。香りは少し甘いべっこう飴やカラメルのような香りがしてきます。味わいは角が取れてマイルドになりますが、独特の個性も出てきますね。もちろん人によって好みが分かれますが、新酒とは異なる味わいを楽しむことができます。
蔵守に関しては温度管理など保存状態が肝になるため、『蔵守の会』という会員になっているお店の限定商品として都内中心に60件ほどのお店に出荷しています。今ある一番古いものは2000年に造ったお酒がありますね。
小澤酒造 吉崎さんオススメ商品
−大変詳しくご紹介いただきありがとうございます。吉崎さんオススメの商品を教えてください。
オススメは『生酛純米吟醸 東京蔵人(読み:きもとじゅんまいぎんじょうとうきょうくらびと)』です。東京蔵人は弊社の商品の中では比較的新しい商品です。これまで「東京」という名前がつく商品がなかったのですが、東京オリンピックもあり、東京と名前がつく商品を作りました。
造り方が特殊でして『生酛造り(読み:きもとづくり)』という日本酒作りの原点の製法で造っています。生酛造りは空気中の乳酸菌を取り込んで乳酸発酵をさせる昔ながらの製法です。造り方は大変手間がかかるのですが、とても繊細で奥深い味わいになります。
昔ながらの生酛造りでありながら、吟醸酒のモダンな香りという「新旧の融合」で東京蔵人を造りました。
『Kura Master』というフランスで行われる、ヨーロッパの人たちのために日本酒を紹介し、世界で日本酒がワインのように選ばれるようになることを目標とした世界的なコンテストでも2019年に金賞を獲得したり、他にも様々なコンテストで賞を頂いております。
日本酒は4つのタイプに分けて食事を合わせる
−日本酒と合わせるのであればどのような食事が良いでしょうか。
日本酒は香りの高さと味の濃淡で4種類に大別されますのでタイプに分けてご紹介します。
まず『薫酒(くんしゅ)』と呼ばれる日本酒は香りがフルーティで、味わいは甘さと丸みが程よく爽快なもので大吟醸酒や吟醸酒が該当します。薫酒にはシンプルな味わいなものが合うので白身の刺身や鮎の塩焼きなど素材を生かした料理が合います。
次に『爽酒(そうしゅ)』と呼ばれる日本酒は香りが穏やかで控えめであり、味わいは清涼感を持っていて、本醸造酒が該当します。爽酒には夏ならカルパッチョやマリネ、冷奴が合います。冬なら煮物やおでんもオススメですね。
3つ目に『熟酒(じゅくしゅ)』と呼ばれる日本酒は香りがスパイスや干した果物など力強さを感じることができ、味わいはとろりとした甘みとマイルドな酸を感じ取ることができるもので長期熟成酒が該当します。熟酒には濃厚な味の食事が合います。うなぎの蒲焼やチーズ、ホワイトソースなどが良いです。
最後に『醇酒(じゅんしゅ)』です。醇酒は樹木や乳性の旨味を感じさせる香りかつ、甘み、酸味、心地よい苦味とふくよかな味わいが特徴で純米酒や生酛造りの酒が該当します。コクを感じるみそ味のものが合います。赤身のお刺身、アジのなめろう、ホタルイカの酢味噌和えなんかが良いですね。
東京蔵人は薫酒と醇酒の特徴を合わせ持つ酒で酸味がほどよく料理に合わせやすいと思います。オススメは鮎のアクアパッツァが良いです。魚の繊細さと旨味を感じられるのでペアリングとして非常に良いのではないでしょうか。他には酒粕とわさびを合わせたわさび漬けも良いですね。
Director’s Voice
吉崎さんは「澤乃井は色々なイベントにも出展しているので、若い方にも東京で日本酒を造る酒蔵が存在していることを知って欲しい」とおっしゃっていました。酒蔵見学も行っていて都内であれば新宿から沢井まで電車で90分ほどで行くことができますし、インターネットでも澤乃井のお酒が販売されています。是非ご家庭の晩酌にいかがでしょうか。
Junki Tada
小澤酒造について
会社名 | 小澤酒造株式会社 |
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住所 | 〒198-0172 東京都青梅市沢井2-770 |
TEL | 0428-78-8215 |
WEBサイト | http://www.sawanoi-sake.com/ |
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