ドイツ人のビール魂「ビール純粋令」
【連載シリーズ】ビールを美味しく飲むためにビールのことをもっと知ろう! −第2話、あなたはエール派?それともラガー派?知られざるビアスタイル。エール編
今回の登場人物
酔生夢死子 ライター・デザイナー時々ミュージシャン。10年会社員を務めた後、フリーランスに転向。現在は気の向くまま、思うまま、酔いと共に日々を過ごす。「できないことはできない。しない。」がモットー。
前回は、ビールはどのような工程で造られているのかや、特に発酵工程が重要で発酵工程によってエールまたはラガー、その他に分けられることを紹介しました。今回はフルーティで複雑な味わいが特徴なエール(上面発酵)で造られるビールのスタイルを8つ紹介します。それでは、ビールの旅へいってらっしゃい。
ドイツで造られるエールとは。
ケルシュ
アルコール度数 4.8~5.3%
ビールの色 ゴールド~麦わら色
ケルシュとはドイツ語でケルン地方のこと。「ケルシュ協約」に調印した醸造所のみケルシュビールと名乗ることができる、原産地統制されたビール。高温発酵・低温熟成によってつくられた、ほのかな甘みと柔らかな口当たりがすっきりとした味わいに。きめ細やかな泡で喉越しも良いビール。
ビールでわんこそば!?
ケルシュはその飲み方に特徴があります。「シュタンゲ(ドイツ語で棒の意味)」という長細い専用グラス(200ml)で飲むのが主流。シュタンゲは「クランツ」というお盆に乗せて運ばれます。空になったグラスはウェイターが新しいビールと取り替え、その際、コースターに線が一本引かれます。これが伝票代わりに。「もうお腹いっぱい!」という時はコースターをグラスの上へ。そうしない限りわんこそばのようどんどんくるので要注意!
デュッセルドルファー・アルト
アルコール度数 4.6~5.6%
ビールの色 カッパー(銅色)~ブラウン
ドイツ西部のデュッセルドルフ地方発祥のビール。銅褐色の見た目にふさわしく濃厚な味わいで苦味が強い。同時にクリーンでみずみずしくフルーティな香りも楽しめるのがデュッセルドルファー・アルトの特徴。
飲み方を知れば、倍楽しい!
デュッセルドルファー・アルトは炭酸が強く泡がすぐなくなりやすいビールです。そのため小さなグラスでぐいっと一気に飲むのが一番美味しい作法。あまり冷やしすぎず、アルトビール本来の香りや味を堪能するが正しい飲み方。しっかりとした味の料理にも引けを取らない濃厚な味わいで、濃いめのドイツ料理とのペアリングも抜群です。
ヴァイツェン
アルコール度数 4.9~5.5%
ビールの色 ごく淡い色~濃い琥珀色
小麦麦芽を50〜70%まで混ぜ、ヴァイツェン・イーストという特殊な酵母で発酵させるビール。ヴァイツェンとはその名の通り小麦という意味。クローブやバナナのようにフルーティな香りとムースのようなきめ細やかな泡が特徴。大麦をあまり使わないので苦味が少なく、まろやかな口当たりが特徴。
ビール醸造の奥深さを伝えるビール
小麦を使うことによって生まれるまろやかな口当たりと、麦だけでフルーティな風味を醸し出すヴァイツェン酵母のマッチングはまさにビール醸造の醍醐味。数多くサブカテゴリーが生み出され、酵母を濾過しない「ヘーフェ・ヴァイツェン」や酵母を濾過する「クリスタル・ヴァイツェン」濃い色の「デュンケル・ヴァイツェン」、アルコール度数の高い「ヴァイツェン・ボック」などが有名です。
イギリスで造られるエールとは。
ポーター
アルコール度数 4.4~5.9%
ビールの色 濃いこげ茶~ダークブラウン
ポーターは若いブラウンエールと熟成したブラウンエール、ペールエールの3つを混ぜたビール。焙煎した茶色麦芽から作られる、芳醇な香りとコクが特徴。いわゆる「黒ビール」の代表格。
運び屋が好んだ、庶民派ビール
もともと「エンタイヤ(一つにまとめる)」と呼ばれていたビールがポーター(運び屋)に気に入られたことから、いつしかポーターと呼ばれるようになったのが名前の由来と言われています。3つの味が重なったコク深いポーターは、冷やしすぎないのが美味しく飲むコツ。ゆっくりと味わいように飲みましょう!
バーレイワイン
アルコール度数 8.5〜12.2%
ビールの色 アンバー~赤銅色
ワインの人気に嫉妬して作られたという説もあるハイアルコールのビール。長くじっくり寝かすことで、フルーティかつ甘みのある、まさしくワインのような仕上がりに。木樽の香りが移るなど、その複雑な味わいが魅力。
長く寝かせることが美味しさの秘密
ワインと名前が付いているように、長期熟成するのが最大の特徴です。その熟成期間は6ヶ月から数年間にも渡り、バーレイワインには他のビールにない「瓶内二次発酵」という工程があります。通常、ビールは瓶詰めする前に酵母の活動を止めます。しかし、バーレイワインは瓶詰めする前にさらに酵母と砂糖を加えます。だからこそゆっくり長く寝かすことによる味わいや風味の変化が楽しめて、まさにワインと名付く所以です。
イングリッシュ・ペールエール
アルコール度数 4.4~5.3%
ビールの色 黄金色~銅色
発祥はイギリス中部のバートン・オン・トレント。ホップの程よい香りと苦味、酵母のフルーティな風味がバランス良く融合。「香り」と「風味」を存分に楽しむことができる人気のスタイル。
キング・オブ・エールビア!
バートン・オン・トレントに流れる水がホップと絶妙に相性がよかったことでこのスタイルが生まれました。そのためエールビール造りに適した水の精製作業は「バートナイズ」と呼ばれるようになるほど。香り高いペールエールは冷やしすぎないのがコツ。少しぬるい?というくらいがよりホップの香りを引き立てます。また苦味が控えめで飲みやすいため、どんな料理とも相性抜群!自分好みのペアリングを探すのも楽しみ方の一つです!
IPA(インディア・ペールエール)
アルコール度数 5.1~7.1%
ビールの色 黄金色~銅色
18世紀末、ジョージ・ホジソンが考案したビール。IPAとはインディア・ペールエールの略。大量のホップを使用した力強い苦味とハイアルコールが特徴。もともとはアルコール度数9%、苦味を表すIBUが100だったとも言われている。
一度飲んだら虜。今、もっとも勢いのあるスタイル。
大航海時代、遠いインドへビールを運ぶのに、腐りにくいビールが必要でした。そのため、防腐効果の高いホップを大量に投入し、アルコール度数の高いビールが造られました。その魅力はなんといっても強烈な香りと、強い苦味。このダブルパンチがクセになり、日本のクラフトビールでも最も人気があるスタイルです。あまり冷やしすぎず、飲む前にはしっかり香りを楽しみましょう。
ドライ・スタウト
アルコール度数 4.1~5.3%
ビールの色 黒色
1778年にアイルランド ダブリンの醸造家アーサー・ギネスが考案したビール。アーサー・ギネスはロンドン生まれのポーターがアイルランドでも評判となっていることを受け、ポーターを造りたかったが、コストが高かったため麦を焦がして真似をしたと言われている。真似をしたもののポーターとは全く異なり、焦がした麦のすっきりした苦味で、ホップの香りは全くなく、泡立ちが非常に良いビールとなった。
当時、最大のビールメーカーギネスが造ったビール
ギネスはロースト麦芽を大量に使うとコストが嵩むことを受け、新たに大麦を麦芽にしないで焙燥したロースとバーレイを考えた。現代では他のスタウトとは区別してドライ・スタウトと呼んでいる。他にスタウトのバリエーションととして、ミルクフレーバーの「スイートスタウト」、ロシアへの輸出目的で造られた「インペリアルスタウト」がある。
まとめ
今回はエール(上面発酵)で造られるビアスタイルを8つご紹介しました。今回ご紹介したのはごく一部のスタイルにはなりますが、エールの中でも日本の中で最も人気なのはIPAではないかと思います。まだエールを飲んでみたことがない方はIPAを飲んでみるのをオススメします!さて次回は、ラガー(下面発酵)で造られるスタイルについてご紹介いたします。是非お楽しみに。
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