「ブドウや食用菊、枝豆、イチゴミルクのビールなど、素材の味を生かした弥彦村や新潟県の魅力が詰まったビールを造っています」
「十日町の地域活性化に繋がるようなことをしたいという思いが根本にあり、妻有ビールをスタートさせました」
新潟県十日町に女性ブルワリーが手掛ける”妻有ビール”があるのはご存知でしょうか。東日本大震災をきっかけに、幼少期から特別な場所であった十日町に何か協力したいという想いで、今回ご紹介する妻有ビールのオーナー兼ヘッドブルワーである髙木さんが十日町に移り住むことになります。
十日町への移住からブルワリー設立までは度重なる苦難がやってきますが、どのようにしていくつものハードルを乗り越えてきたのか、本日は髙木さんに直接お聞きしてきました。
今回の登場人物
BANSHAKU編集部 多田(以下、BANSHAKU 多田)
好きなお酒はビール(セゾンスタイル)。ビアテイスターの資格を持っている。最近、自宅居酒屋化計画を実行中。詳細は謎に包まれている。
妻有ビール株式会社 代表取締役 髙木千歩(以下、妻有ビール 髙木さん)
2011年東日本大震災をきっかけに両親の出身地十日町市の地域おこし協力隊に応募。2014年4月に仲間4名で地産地消型ビアレストランを開業、その後2017年1月に妻有ビール株式会社を設立。地域の皆さんと地産地消型のビール醸造に取り組む。
大好きな十日町の町おこしからクラフトビール造りの道へ
本日はよろしくお願いいたします!まずは会社を立ち上げられた経緯を教えてください。
弊社は新潟県十日町にブルワリーがありまして、両親の出身地なので幼少期のときから十日町にはよく遊びに来ていました。ここは自然豊かで普段できないような体験ができることから、私にとって特別な場所で愛着のある大好きな町だったのです。
私は以前は東京で会社員として働いており、そんなときに2011年の東日本大震災をきっかけに「大好きな十日町に何か協力できないか」と思い”地域おこし協力隊”に応募し十日町に移住しました。
協力隊の任期は3年ということもあり、これから何をしていこうか考えたときに東京にいるときからクラフトビールを飲み歩くのが好きだったため、国産のクラフトビールを提供する地産地消をテーマにしたレストランをやろうと”ALE beer&pizza(エールビアアンドピッツア)”を仲間とオープンさせました。
東日本大震災をきっかけに十日町に移住されたのですね。その後のお話もお伺いしたいです。
最初は十日町から離れた遠くのクラフトビールを提供していてお客さんにも喜んでもらえていたのですが、たびたび「十日町のクラフトビールはないのですか」と聞かれることがありました。その経験からクラフトビールを自分でも造ろうと思ったのです。
十日町の地域活性化に繋がるようなことをしたいという思いが根本にあり、2017年から妻有ビールをスタートさせたという流れなので、当初は自分がクラフトビールを造っているとは全く思っておりませんでしたね。
たくさんの人の協力のもと念願のブルワリー設立
紆余曲折を経てビール醸造にたどり着いたということですね。醸造をスタートする上で苦労されたことがあると思うのですが、どのようにしてブルワリーを設立されたのですか。
当時は資金調達が難しくて一度諦めかけたときもありました。
以前勤めていた会社経営のプロである東京時代の恩人と会う機会がありその方が事業資金の支援をしてくれたり、クラウドファンディングによる支援を募ったりと、いろいろな方々のご協力のおかげでなんとか資金を集めることができたのです。
ビール造りの勉強は山梨県甲府市にある”アウトサイダーブルーイング”さんの醸造家たちの中では有名な、”丹羽智”さんの元で醸造技術から工場のレイアウトのことまでたくさんのことを教えていただきました。
その後、醸造免許の申請をして取得できるのが早くて半年、遅くて1年と言われており、きちんと免許が降りるのか不安でした。免許交付を待っている時間が一番つらかったかもしれませんね。資金調達もそうですが醸造所の設計だったりと本当に多くの方々に助けていただいたと思っております。
はじめての方でも馴染みやすいビール造りとは
たくさんの方の協力があって設立できたのですね。そろそろビールのお話に移っていきます。妻有ビールさんではどのようなコンセプトでビールを造っているのですか。
最初に造った定番の3種類のビールは、親しみやすさがあって飲みやすいビールを追求いたしました。
買っていただくほとんどのお客さまはクラフトビールにあまり馴染みの少ない地元の方が多いので「まずはクラフトビールの良さや楽しさを知ってもらいたい」というコンセプトで地産地消をテーマにしたビールを醸造しております。
地域の魅力が詰まったビールになのですね。その中からおすすめのビールを教えてください。
十日町の地場の特産品を使った定番商品である”十日町そばエール”というオリジナルスタイルのビールがおすすめですね。こちらは地元のお蕎麦屋さんとのコラボビールでして、十日町で栽培された蕎麦の実を使用したビールです。
蕎麦の実ですか。十日町ならではのビールですね。
2つ目は”柏崎ウィートあんにんごの花”というビールです。十日町の隣にある柏崎市で栽培されている小麦と、実際に自分で採りにいった杏仁子(あんにんご)というアーモンドのような甘い香りがする花を使ったビールになります。
杏仁子は昔から魚沼地域では山菜として親しまれており、つぼみを塩漬けにして食べたり赤い実をお酒に漬け込んで果実酒として飲んだりと、地域の食文化に根付いている花になります。
ただ、今の若い世代の方達にはなかなか馴染みのないものになってきているので、ビールに使うことによってもう一度地域の食文化を見直してもらうきっかけになったらと思い造ったビールになります。
今回のコロナの影響で行き場を失いかけたビールを地域のみなさんが応援の気持ちで買いにきてくださったり、本当に感謝しております。
髙木さんが教えてくれたフードペアリングのススメ
杏仁子という花は初めて聞きました。髙木さんがお困りのときにみなさんが助けてくださるのは、地域の方々に愛されている証拠なのだと思います!
最後にビールに合わせたおすすめのフードペアリングがあれば教えてください。
十日町そばエールは基本的に和食全般との相性がいいですね。特にその中でも天ぷらとよく合って十日町で採れる山菜の天ぷらがおすすめです。
柏崎ウィートあんにんごの花はこってりとした料理ではなく、チーズやナッツのような軽食との相性がいいと思いますよ。
Director’s Voice
妻有ビールさんは今年の9月からオンラインショップなどの対応もできるようにボトルビールでの販売も予定されているようです。私個人的には大の蕎麦好きなので「十日町そばエールを是非飲んでみたい」そんな気持ちになりました。9月のオンラインショップでの販売を楽しみにしています。
Junki Tada
妻有ビールについて
ブルワリー名 | 妻有ビール |
---|---|
住所 | 新潟県十日町市太平字塚上り474番1 |
TEL | 090-1037-4388 |
https://www.facebook.com/tsumaribeer/ |
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