「たくさんの危機を乗り越えてきたからこそ、今があるのではないでしょうか」
「東日本大震災に津波で流された気仙沼の復興の一助になれればという想いから立ち上がりました」
2011年、文字通り日本を大きく揺るがせた東日本大震災。ここ宮城県気仙沼は東日本大震災で津波により甚大な被害を受けた地域とも言われ、当時たくさんの報道がされていたことは記憶に新しいかと思います。
そのような困難な状況から「東日本大震災に津波で流された気仙沼の復興の一助になれれば」という想いを持ち、今年醸造所を開業されたブルワリーが”BLACK TIDE BREWING”です。今回はBLACK TIDE BREWING、丹治さんにブルワリー設立の経緯やこだわりのビールについてお話をお伺いしていきます。
今回の登場人物
BANSHAKU編集部戸川(以下、BANSHAKU戸川)
編集部随一の音楽通。趣味は音楽とお酒、AirPodsとは親友であり渋谷のタワレコに頻繁に出没する。
BLACK TIDE BREWING丹治(以下、BTB丹治さん)
BTB営業部長兼アシスタントブリュワー。ビール好きが高じて自動車設計士からブリュワーに転職。国内のマイクロブルワリー立ち上げを経験し、震災ボランティアを通じて訪れた気仙沼にブリュワリーができると聞き、BTBの仲間に加わる。
BLACK TIDE BREWING誕生秘話
まずは事業を起こしたきっかけを教えていただけますか。
BLACK TIDE BREWINGは、東日本大震災の大津波で流された気仙沼内湾エリアにありまして、「気仙沼の復興の一助になれれば」という想いから立ち上がったブルワリーです。
気仙沼市内の有力者、飲食業、クラフトビール、まちづくり等の各界のスペシャリストが一堂に会して、「気仙沼のためになる事業を創ろう!」という代表たちの熱い想いから、クラフトビールの醸造所を設立することになりました。
設立にあたり、気仙沼市内および全国の個人様・法人様からご出資いただき、そのお陰でBTBの事業を開始することができました。
醸造所を設立するという大枠は決まったのですが、プロジェクトが進行する中でビールを醸造するヘッドブルワーが決まっていませんでした。そんな中、醸造設備購入などでサポートしていただいていた、Farmersさんとの繋がりで、現在のヘッドブルワーであるジェームズと運命的な出会いを果たしました。
ジェームズは当時西海岸でビール醸造を13年ほどおこなっており、クラフトビールのビジネススクールも修了していました。そしてジェームズ自身が日本のローカルエリアでマイクロブルワリーを始めたいと夢を持っており、お互いの想いが合致したのです。
丹治さんが入社されたのはどのような経緯があったのですか。
BLACK TIDE BREWINGに入社する前は、過去BANSHAKUの記事でも登場したMITSUKE Local Breweryさんで工場長として働いておりました。
MITSUKE Local Breweryのオーナー中嶋さんが記事でお話しされていた「以前ブルーマジックさんで出会ったお客さんの中に新潟県出身の醸造経験者という方がいてその方に手伝っていただけるようお願いをしました。」というのは私のことなのです。
その中嶋さんがFacebookでBLACK TIDE BREWINGの事業に関する投資説明会のお知らせに“いいね”をしていて、BLACK TIDE BREWINGの存在を知ったのです。
私は2011年の8月にボランティアで気仙沼にも訪れていて以来、東北のこと、そして気仙沼のことに興味を持ち続けていました。夜行バスで東京に行き説明会に参加して、「仲間に入れてください」と代表たちにお願いをしました。スキンヘッド&髭でスーツを着ていたものですから、代表たちからは「あの時ヤバイのが来た」と今でもネタにされています。
BTBでの私の役割は“何でも屋”といいますか、これまでの経験を生かして醸造作業や営業活動、市内配送や受注・出荷業務などもやっています。
ファンクラブ”BTB CREW”とは
BLACK TIDE BREWINGさんのホームページでは”BTB CREW”というのを目にしましたがこれはどのようなものなのでしょうか。
BTB CREWは年間費制度のファンクラブです。このファンクラブは、気仙沼の人にBTBをもっと身近に感じていただきたい、一緒にBTBを育てていただきたいという想いからサポーターを集っています。ファンクラブに入るとBLACK TIDE BREWINGのビールが割引になる特典などもあります。
イベントで同じTシャツやグッズを作り手・売り手・お客様のみんなで着用すると不思議な一旦感が出ます。イベントに一緒に参加して美味しいビールを飲むと、一般のお客様からBTBの一員のようになるのです。
この楽しみ方はクラフトビールならではの文化だなと思っていて、現在100名近くのメンバーがBTB CREWになってくれています。コロナ禍の時でも「飲んで応援するから!」とグラウラーでの量り売りに来てくださりと、BTBには欠かせない大切な仲間です。
クラフトビールの多様性を伝えるビール造り
BTB CREWは素敵な取り組みですね!どのようなビールを造っていらっしゃるのですか。
IPAやヘイジー IPA、セゾンにラガーと色々なスタイルを造っています。毎回ビールを仕込むたびにレシピを大幅に変えていて、ビールの商品名やデザインも“気仙沼”らしさや“BTB”らしさが感じられる商品を、チーム一丸となって創っています。月に新商品を4種類出すことを目標に、日々醸造をしています。
今年醸造を開始したため定番と言えるかまだわからないのですが、”DAYS OVER”というビールをご紹介します。DAYS OVERは小麦麦芽を使用した口当たりが優しく、ニュージーランド産ホップの香りが楽しめるラガータイプのビールです。
ラガーというと一見、ドライでキレのある大手メーカーさんのピルスナーをイメージされる方も多いかと思いますが、エールのように味わい深く、微かに濁りがあるDAYS OVERは真逆をいくような少し違うタイプのラガーだと思っています。
初めてクラフトビールを飲むお客様に”ビールの多様性”を知ってもらえるよう、現在日本のクラフトビール界で人気があるIPAやHAZY IPAだけではなく、醸造開始当初からラガーも造っています。
BLACK TIDE BREWINGさんのビールに合わせておすすめの食事がありましたら教えてください。
DAYS OVERは、ホップやイーストが醸し出す香り、モルトのキャラクターも感じられるので、個人的には気仙沼の笹かまぼこと合わせるのがオススメです。
魚の旨味がギュッと詰まった笹かまぼこと、DAYS OVERの味わいの組み合わせは面白くて気軽に楽しめます。笹かまぼこはチーズが入っていたりと味わいのバリエーションがありますし、ワサビ醤油等の調味料をつけてアレンジするのも面白いかなと思います。
今後の展望
最後に今後の展望や目標をお聞かせください。
直近はIPAの缶ビールが売り切れており、これから新たに造りますので皆様には楽しみにして欲しいです。8月から新しいブリュワーがBTBの仲間に入りました。これから醸造量を増やして、皆様に最高の気仙沼産のクラフトビールをお届けしていきたいと思っております。加えて、発泡酒免許を申請中で、取得後はフルーツをふんだんに使ったビールも醸造予定ですので、楽しみにしていてください。
また、新型コロナウイルスの影響で気仙沼に来る方も減っていますが、落ち着いたころにはぜひ気仙沼までお越しいただきたいなと思います。気仙沼の地元の人たちはウェルカムな方が多いので、タップルームに観光の方が来ると、常連さんが気さくに気仙沼の良さを教えてくれます。タップルームがそのような出会いの場所になっているのは良いところだと思いますね。ジェームズと一緒に皆様のお越しをお待ちしております。
Director’s Voice
今回の取材でBLACK TIDE BREWINGさんは様々なつながりで人が集まったことを強く感じました。また、その繋がりを通してお客様をただのお客様としてではなく、BTB CREWという仲間に迎え入れて一緒にブルワリーをつくる取り組みをされているのは、他にはないとても素晴らしい取り組みだと思います。読者の皆様もぜひ気仙沼を訪れた際には立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
Junki Tada
BLACK TIDE BREWINGについて
住所 | 〒988-0017 宮城県気仙沼市南町3-2-5 拓(ヒラケル)内 |
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公式ホームページ | https://blacktidebrewing.com/ |
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